少年に別れを告げる日


2人を見送った美織は人がいないのを確認して、ベッドの周りのカーテンを閉める。

「伊織、ばれちゃったよ」

そっとさらしを緩めながら、ぽつりと呟いた。呼吸が楽になったのか、苦しそうだった表情は少しだけやわらいだ。

「苦しいよね、ごめんね」

胸を締め付けているのもそうだが、性別を偽っていることのほうがもっと苦しいだろうと美織は思う。美織にはわからない苦しさに、伊織は何年も耐えているのだ。

「伊織は女の子なのにね」

美織はできることなら、もうやめてほしかった。女が当主になってはいけないんだろうか。今の伊織はきちんと当主としての役割を果たしている。

言うなら、なるべく早いほうがいいような気がした。嘘を固めてしまえばしまうほど、きっとばれた時の反発は大きくなる。でも、もう遅いのだろうか。

美織は静かに伊織の頭をなでて、もう一度「ごめんね」とささやいた。

***

「ごめんね」

遠くから聞こえる苦しそうな声。大切な妹の声だった。泣かないでと伊織は思う。美織を苦しめたかったわけじゃないと。

同じ日に生まれたのに、自分よりずいぶん近く小さくて、すぐ体調を崩してしまう美織を守らなくてはとずっと思っていた。

守りたいのに、傷付けてしまっている。

伊織はそのことにも気付いていた。