「ああ、来たか。先生いないらしくてさ」
ドアを開けるとすぐそこに湊がいた。いつになく難しい顔をしている。
「伊織は……」
「そこのベッドに。伊織って貧血ぎみ?顔真っ青なんだよ」
「ううん、貧血ではないと思うけど」
カーテンを開けて中に入ると、青白い顔をした伊織が浅い呼吸をしていた。さらしのせいかもしれない。胸を締め付けているせいで、呼吸がしにくくなっているんじゃないか。
「とりあえず服緩めて、楽な状態に……」
昴が伊織の方に手を伸ばした瞬間、美織は思わず叫んでいた。
「ダメ!」
「……え?」
昴は呆気にとられて美織を見つめた。伸ばしかけた手が中途半端な位置で止まっている。美織が感情をはっきり出すのは珍しい。声を荒げたことなんて、今までなかった。しかも、昴としては悪いことをしようとしたつもりはない。
「あ、ご、ごめんなさい。あの……」
言い訳もできなかった。さらしを見られたらばれてしまう。そう思う間もなく、声を出していた。
「美織ちゃん」
「……はい」
どうしよう。それしか頭に浮かばなかった。湊がじっと美織を見つめる。
「違和感はずっとあった。女顔だって言われると過剰に反応することとか、着替える時に周りを気にすることとか、まあ、たくさん。俺の考えが間違ってるなら、今ここではっきり言ってほしい。伊織本人に言うのは失礼だし」
わかっている言い方だった。湊がいつ気付いたのかわからないが、もう気付いている。
「湊、何言って……」
「昴は黙ってて」
ぴしゃりと言って昴を黙らせる。逃げることはできそうになかった。美織は目を閉じている伊織を見た。どうしようと心の中で問いかける。
「否定はしないというか、できないけど、私だけじゃなくて伊織の問題でもあるし、伊織自身の気持ちが大事だと思うから、今は、言えない」
伊織はそれを望むだろうか。美織にはどうしても判断できなかった。
「責めるつもりじゃないんだ。伊織と美織ちゃんが意味もなくやるはずないと思う。もし俺達が力になれるなら、相談してほしい」
「よくわかんないけど、困ってることがあるなら、力になるから……なっ?」
湊も昴も嘘を言っているようには見えなかった。信用してもいいんだろうか。助けを求めてもいいんだろうか。
親戚の中でも知らない人がいる秘密。学校でも道場でも隠し通さなくてはと、伊織も美織も必死だった。
「今言っても仕方ないか」
「……ごめん。それと、ありがとう」
湊は「いいよ」と優しく笑った。美織の肩から力が抜ける。
「あとは1人で大丈夫?」
「うん」
「了解。行くぞ、昴」
昴も空気を読んだのか何も言わずに頷いて、湊と一緒に保健室から出て行った。
ドアを開けるとすぐそこに湊がいた。いつになく難しい顔をしている。
「伊織は……」
「そこのベッドに。伊織って貧血ぎみ?顔真っ青なんだよ」
「ううん、貧血ではないと思うけど」
カーテンを開けて中に入ると、青白い顔をした伊織が浅い呼吸をしていた。さらしのせいかもしれない。胸を締め付けているせいで、呼吸がしにくくなっているんじゃないか。
「とりあえず服緩めて、楽な状態に……」
昴が伊織の方に手を伸ばした瞬間、美織は思わず叫んでいた。
「ダメ!」
「……え?」
昴は呆気にとられて美織を見つめた。伸ばしかけた手が中途半端な位置で止まっている。美織が感情をはっきり出すのは珍しい。声を荒げたことなんて、今までなかった。しかも、昴としては悪いことをしようとしたつもりはない。
「あ、ご、ごめんなさい。あの……」
言い訳もできなかった。さらしを見られたらばれてしまう。そう思う間もなく、声を出していた。
「美織ちゃん」
「……はい」
どうしよう。それしか頭に浮かばなかった。湊がじっと美織を見つめる。
「違和感はずっとあった。女顔だって言われると過剰に反応することとか、着替える時に周りを気にすることとか、まあ、たくさん。俺の考えが間違ってるなら、今ここではっきり言ってほしい。伊織本人に言うのは失礼だし」
わかっている言い方だった。湊がいつ気付いたのかわからないが、もう気付いている。
「湊、何言って……」
「昴は黙ってて」
ぴしゃりと言って昴を黙らせる。逃げることはできそうになかった。美織は目を閉じている伊織を見た。どうしようと心の中で問いかける。
「否定はしないというか、できないけど、私だけじゃなくて伊織の問題でもあるし、伊織自身の気持ちが大事だと思うから、今は、言えない」
伊織はそれを望むだろうか。美織にはどうしても判断できなかった。
「責めるつもりじゃないんだ。伊織と美織ちゃんが意味もなくやるはずないと思う。もし俺達が力になれるなら、相談してほしい」
「よくわかんないけど、困ってることがあるなら、力になるから……なっ?」
湊も昴も嘘を言っているようには見えなかった。信用してもいいんだろうか。助けを求めてもいいんだろうか。
親戚の中でも知らない人がいる秘密。学校でも道場でも隠し通さなくてはと、伊織も美織も必死だった。
「今言っても仕方ないか」
「……ごめん。それと、ありがとう」
湊は「いいよ」と優しく笑った。美織の肩から力が抜ける。
「あとは1人で大丈夫?」
「うん」
「了解。行くぞ、昴」
昴も空気を読んだのか何も言わずに頷いて、湊と一緒に保健室から出て行った。

