伊織は美織がクラスメイトと話しているのをぼんやりと眺めていた。
前の学校では見られなかった光景だ。一度は体調を崩したものの、それ以降は順調に学校に通っている美織。心なしか表情も以前より明るくなったような気がする。
「何見てんの?」
「ああ、湊か。美織もずいぶん馴染んだなと思って」
「あー、狙ってる男子も結構いるしな」
「は!?」
「いやいや、当たり前だろ?可愛いじゃん。ついでに伊織の女子人気もかなりのものだけど」
全く嬉しくない。伊織はため息をついた。できることなら、目立たないようにしていたい。
「美織ちゃん、前より顔色もよくなった」
「最近、やっと食べるようになったからな。ずっと食が細くて心配してたから、ほっとしてるよ」
「……兄というより、親みたいなんだけど」
湊は呆れたように呟いた。伊織としては親のような気持ちも多少ある。
伊織と美織はどちらも2000gに満たない体重で生まれてきた。しかし、約1800gだった伊織は低出生体重児、約1400gだった美織は極低出生体重児と厳密にいえば区別されるらしい。
その差のせいか、美織だけが生まれつき心臓に疾患があった。今は手術も終わって異常はないのだが、8歳になる頃には同年代と変わらない身長まで成長した伊織と違い、美織は今でも同年代より小さいままだ。
なんとなく伊織は責任を感じてしまう。お腹の中にいる時に栄養が偏ってしまったせいなんじゃないかと。だから、美織の成長は親のように嬉しく感じる。
「生まれた時、美織の方が小さかったし、そのせいかずっと病気がちなんだ。僕はこの通り丈夫に育ったんだけどね」
「そうなの?体調崩したの1回くらいだろ?」
「こっちに来てからは調子がいいんだ。このまま身長も伸びてくれるといいんだけど」
美織の隣にいる紫乃に視線を移す。美織が馴染めたのは紫乃のおかげなのだと思う。どうすればいいかわからずにいる美織をさり気なく誘導してくれている。
「……逢沢さんって、すごいな。彼女がいなかったら、美織は馴染めなかったかもしれない」
「紫乃ちゃんは色んな意味ですごいからなー」
湊が笑う。色んな意味って何だろうと思った伊織が聞き返そうとした時、美織が近付いてきた。
「伊織、大丈夫?」
「ん?」
いつも大丈夫?と聞くのは伊織の方だ。何を心配しているのかわからなくて首を傾げる。
「ちょっと顔色悪いよ」
「ああ、朝からちょっとだるいんだ。我慢できないほどじゃないから、大丈夫」
美織が更に心配そうな顔になる。自分が体調を崩すことは多いが、伊織が体調を崩すことはほとんどない。美織の風邪がうつって一緒に寝込んだことは何度かあるが、それくらいだ。
「大丈夫だよ。具合悪くなれば保健室行くし」
「無理しないでね」
「ああ、ありがとう」
朝起きた時から倦怠感があった。普段通りに振る舞っているつもりだったが、美織をごまかすことはできなかったらしい。今日は早めに寝ようと思いながら、美織を安心させるように笑みを浮かべた。
前の学校では見られなかった光景だ。一度は体調を崩したものの、それ以降は順調に学校に通っている美織。心なしか表情も以前より明るくなったような気がする。
「何見てんの?」
「ああ、湊か。美織もずいぶん馴染んだなと思って」
「あー、狙ってる男子も結構いるしな」
「は!?」
「いやいや、当たり前だろ?可愛いじゃん。ついでに伊織の女子人気もかなりのものだけど」
全く嬉しくない。伊織はため息をついた。できることなら、目立たないようにしていたい。
「美織ちゃん、前より顔色もよくなった」
「最近、やっと食べるようになったからな。ずっと食が細くて心配してたから、ほっとしてるよ」
「……兄というより、親みたいなんだけど」
湊は呆れたように呟いた。伊織としては親のような気持ちも多少ある。
伊織と美織はどちらも2000gに満たない体重で生まれてきた。しかし、約1800gだった伊織は低出生体重児、約1400gだった美織は極低出生体重児と厳密にいえば区別されるらしい。
その差のせいか、美織だけが生まれつき心臓に疾患があった。今は手術も終わって異常はないのだが、8歳になる頃には同年代と変わらない身長まで成長した伊織と違い、美織は今でも同年代より小さいままだ。
なんとなく伊織は責任を感じてしまう。お腹の中にいる時に栄養が偏ってしまったせいなんじゃないかと。だから、美織の成長は親のように嬉しく感じる。
「生まれた時、美織の方が小さかったし、そのせいかずっと病気がちなんだ。僕はこの通り丈夫に育ったんだけどね」
「そうなの?体調崩したの1回くらいだろ?」
「こっちに来てからは調子がいいんだ。このまま身長も伸びてくれるといいんだけど」
美織の隣にいる紫乃に視線を移す。美織が馴染めたのは紫乃のおかげなのだと思う。どうすればいいかわからずにいる美織をさり気なく誘導してくれている。
「……逢沢さんって、すごいな。彼女がいなかったら、美織は馴染めなかったかもしれない」
「紫乃ちゃんは色んな意味ですごいからなー」
湊が笑う。色んな意味って何だろうと思った伊織が聞き返そうとした時、美織が近付いてきた。
「伊織、大丈夫?」
「ん?」
いつも大丈夫?と聞くのは伊織の方だ。何を心配しているのかわからなくて首を傾げる。
「ちょっと顔色悪いよ」
「ああ、朝からちょっとだるいんだ。我慢できないほどじゃないから、大丈夫」
美織が更に心配そうな顔になる。自分が体調を崩すことは多いが、伊織が体調を崩すことはほとんどない。美織の風邪がうつって一緒に寝込んだことは何度かあるが、それくらいだ。
「大丈夫だよ。具合悪くなれば保健室行くし」
「無理しないでね」
「ああ、ありがとう」
朝起きた時から倦怠感があった。普段通りに振る舞っているつもりだったが、美織をごまかすことはできなかったらしい。今日は早めに寝ようと思いながら、美織を安心させるように笑みを浮かべた。

