もう、もう、心臓爆発して死ぬかと思った!

三途の川、見えかけた……!


膝に手をついてゼェゼェと荒い呼吸をし、暴れる鼓動を落ち着かせていると。


「ふっ、ふははっ」


突然笑い声が聞こえてきた。


振り返ると、開け放たれたロッカーの中で高嶺がお腹に手を当て笑っていて。


「な、なに笑ってんの……っ!」


こっちは、あんたのせいで危うく死にそうになったんだから……!


「ははっ、色気ねぇ声だし、なんだよその逃げ方。
つかさ、まじでツボ……っ」


「はあ?」


高嶺が涙目になりながら笑う。


「久々にこんなに笑った……っ」


それは、プリンスの笑顔でもない、悪魔の笑顔でもない、初めて見た笑顔で。


「……もう、笑いすぎだからっ!」


あんなに散々からかわれたっていうのに。

高嶺が、本当の笑顔を見せてくれた、そのことに、ほんとちょこっとだけホッとしている自分がいるんだから、あたしはどうにかしているのかもしれない。