だけど、覚悟していた感触は唇にやってこなくて。


そうっと目を開けると、目の前には平然とした表情の高嶺。


「顔についてたゴミ取っただけだけど。
あれ、もしかして、期待した?」


薄暗くても、よく分かる。

高嶺の瞳が、意地悪くギラついたことが。


完全に確信犯。


一瞬にして、自分がからかわれたのだと悟る。


「ううう……意地悪! 最低! クズ!」


沸騰しそうなほど熱い頭で、今思い浮かぶ限りの罵倒の言葉を投げつけるけど、高嶺は勝ち誇ったような、意地の悪い笑みを浮かべた。


「でも、本当の俺がいいって言ったの、つかさだよな?」