【完】素直じゃないね。



やがて、鬼センの足音が遠ざかっていき、あたしの口は高嶺の手から解放される。


「ぷ、はっ。
口強く押さえすぎ! 窒息するから!
早く外の空気を……」


いち早くロッカーから出ようとしたあたし。


だけど、それは叶わなかった。


なぜなら、高嶺があたしの手を掴んで動きを制したから。


「……えっ? 早く出よ……」


振り返った瞬間、高嶺に顎をくいっと持ち上げられ、あたしの声が途切れる。


「……っ」


な、な、な、なにっ……?


至近距離で瞳がかち合う。


高嶺が今にもすべてを引き込んでしまいそうなほど強く、まっすぐにあたしを見つめてくるから、目をそらせない。