「授業、サボっちゃって良かったの?」
高嶺が授業をサボったことなんてきっとないから、少し不安に思って訊くと、「あーいいよ」と軽く返す高嶺。
「涙、見せたくないんだろ?
お前強がりだし」
「え?」
「そういうとこ、俺と似てるから」
だから、あたしのこと連れ出してくれたんだ……。
このブレザーだって、あたしの涙が見えないように掛けてくれたに違いない。
頭に掛けているブレザーをぎゅっと握りしめる。
ブレザーから漂ってくる香りは、甘ったるくて、でも嫌じゃなくて。
「ありがとう、高嶺……」
そっとお礼を口にした、その時。
「おい! だれかいるのか! 授業中だぞ!」


