だれもいない廊下を歩きながら、ブレザーを目の上まで上げて視界を確保する。 まだ、この状況をのみこめていない。 「高嶺?」 呼びかけると、高嶺がこちらを振り返った。 その無愛想な顔には、もうプリンススマイルの欠片も残っていない。 「ったく、お前って、ほんとにピンチに遭うのが得意だよな」 「……う、ごめん」 まったく、そのとおりです。 でも、なんだかんだ言いながら、その度助けてくれるのは高嶺なんだ。