と、その時。
「ほらー、午後の授業始めるぞー。席つけー」
教室の空気なんて知る由もない先生が、大声をあげながら教室に入ってきた。
「先生」
その先生を、高嶺がすっと通る声で呼び止める。
「お、なんだ、高嶺」
「日吉さんの体調が優れないようなので、保健室に連れて行きます」
「……へっ!」
急展開に、頭からかけられたブレザーの下で思わず目を丸くする。
いやいや、体調優れなくないよ?
むしろ、すこぶる体調良いよ!?
「おお、そうか。なら頼んだぞ、高嶺。
高嶺がついていれば、安心だ。
日吉も、お大事にな」
ええ……! 先生まで!
先生は、優等生の高嶺に絶対の信頼をよせてるから、疑う余地もないらしい。
困惑するあたしの手首を、高嶺が握る。
「ほら、行くよ」
「うえっ……」
ブレザーを掛けられ、ほぼ視界を遮られているあたしは、抵抗することもできずに高嶺に手を引かれるまま教室を出た。


