だけどあたしは状況を理解できずに、混乱していた。
高嶺、保健室から戻ってきたの?
でもなんで今、高嶺が?
ありがとう、ってなにが……?
疑問符ばかりが押し寄せてきて、混乱したまま顔をあげる。
すると暗闇の隙間から、あたしに微笑みかける高嶺の姿が見えた。
プリンスの笑顔だ。
と同時に、あたしに掛けられているのが、高嶺のブレザーだということを悟る。
「本当に助かったよ、この前は」
「この前……?」
突然、なに言ってるの?
「ほら、俺とふたりで帰った時だよ。
足をケガして身動き取れなくなったから、偶然通りかかった日吉さんに頼んで、家まで送ってもらったんだよね。
日吉さんがいなかったら、俺は家に帰れなかったよ」
教室に響くように、わざと大きな声で話す高嶺。
全部、嘘っぱちのでまかせだ。
もしかして……あたしのこと庇ってくれてる?


