【完】素直じゃないね。



……なんで。宝物、なのに。

乃亜から貰った、大切な、大切な……。


このキーホルダーをくれた時の乃亜の笑顔が、頭をよぎる。


乃亜があたしに作ってくれた、キーホルダー……。


ツンと鼻の奥が痛くなった。


三人組の姿がぼやけてきて、あたしはバッとうつむく。


泣いてるとこなんて、見られたくない。


でも、こんなの……こんなのひどすぎる……。


ぎゅうっと目をつむり、キーホルダーを握りしめたその時。


──パサッ。


あたしの頭に、なにかが掛けられた。


そして。


「日吉さん、この前はありがとう」


頭上から降って聞こえてきた、低くて甘ったるい声。


これは──高嶺の声だ。


突然の高嶺の行動に、教室中が注目するようにシンとしたから、高嶺の声が騒音に邪魔されることなくすっと耳に届いてくる。