「桜先生、いないんだよね。
でも頭痛薬なら、ここに……」
絆創膏の隣の引き出しに、『頭痛薬・胃薬』のシールが貼ってある。
その引き出しを開けた時。
「いらねぇよ」
耳に飛び込んできたいつもと違う尖った声に、あたしは思わず手を止めた。
「え?」
「やっぱ戻るわ」
再び高嶺に目を向けると、踵を返した高嶺が保健室から出て行こうとするところで。
「高嶺……!」
思わず高嶺の手首を掴んでいた。
自分から男の人に触れるなんて、考えられないことだった。
だけど、考えるより先に体が勝手に動いてた。
「なんだよ」
「なにかあったの?」
高嶺、変だ。
あからさまに距離を取ろうとしてるし、冷たいし。
そんなふうにされて気にならないはずがない。


