【完】素直じゃないね。







それから午前中の授業を終え、お昼休み。

いつものように、乃亜と机を合わせてお弁当を食べる。


「今日の現文めちゃくちゃ眠かった〜」


「ふふ、体育の後だしね」


相槌を打ちながら笑っていた乃亜の視線が、不意にあたしの手首に止まった。


笑顔が消えて、眼鏡の奥のまんまるな目が見開かれる。


「あ……! つかさちゃん、手首のところ擦りむいてる!」


「え?」


乃亜の視線を辿ってブレザーから袖口を覗くと、手首に走る擦り傷を見つけた。


乾いているものの結構な出血量だったらしく、広範囲に血が付いている。


瞬間、体育のときのことを思いだす。


突き飛ばされた時壁に擦ったんだ、きっと。

全然気づかなかった。


「ち、血も出てるし、早く手当しないと!
どこでケガしちゃったの? 痛くない……っ?」


血が苦手な乃亜が、あわあわと声を震わせる。


「大丈夫だよ、痛くもなんともないし。
知らぬ間にどっかに擦っちゃったのかな、あはは……」