【完】素直じゃないね。



「この間、見かけたの。
あんたと高嶺くんがふたりで歩いてるとこ」


彼女が言っているのは、ファミレスに行ったあと高嶺が送ってくれたあの日のことだと、すぐに悟る。


あれ、見られてたんだ。

高嶺は注目を集めるもんな……。

なんて呑気にそんなことを考えたのもつかの間、女子達が怖い顔で詰め寄ってきていることに気づいた。


「どうせ、あんたがたぶらかしたんでしょ?
高嶺くん優しいから、あんたのこと断れなかったのよ」


いやいや、ちょっと待って。

どうしたら、そうなるの。


あたしが、あんな悪魔をたぶらかすわけないでしょうが!


「違うよ、そんなんじゃないから」


でも否定したところで、はいそうですか、なんて納得してもらえるはずのない雰囲気だ。


三人は、教室では見せないような、敵意むき出しの表情で。