……でも、なんだか違くない?


女の子の名前全部覚えてるみたいだし、受けるのは軽いって印象。


ほら、黒い髪に隠れてるけど、いくつかピアスの跡だって見えてるし。


それに……。


「なんか、あの笑顔胡散臭くない?」


「ええっ?」


「仮面でも被ってるみたい」


ぽつりと本音が口からこぼれ出た。


完璧すぎて、作り物みたい。


あたしが読んだ童話に出てきたプリンスとは、なにかが違う……気がする。


「……まっ、そんなわけないか」


あたしってば、初対面の人に対してなに深く考えてるんだろ。


こんなこと思ってるの、あたしだけだよね。


ほら、プリンスのまわりの女子達なんて、みんな目をハートマークにしてるし。


「さ、乃亜、教室入ろー。
春休み中のこととか話したいし!」


あたしにとっては、プリンスなんかより、可愛い可愛い乃亜に癒される方が先決だ。