「もしかして、つかさちゃん、プリンスのこと知らないの?」


会ったこともないプリンスとやらを心の中でバカにしていると、そんなあたしの異変に気づいたのか、乃亜が驚きの声を上げた。


「うん、知らない。だれのこと?」


「とっても有名な人だよ〜?
高嶺 悠月(たかみね ゆづき)くん」


「タカミネ?」


「そうそう!
〝高嶺の花〟って言葉があるでしょ?
その高嶺って書いて、タカミネくん」


「ふーん」


クラス違う人のこと、全然把握してないんだよね、あたし。

クラスっていうか、乃亜しか眼中にないから。


「どんなに可愛い子が告白しても振られちゃうから、高嶺(たかね)のプリンスって呼ばれてるんだよ」


「へー」


ふと乃亜があたしの腕を引っ張って人だかりに近づくと、背伸びをして、ある男子を指差した。


「ほら、あの彼!」