【完】素直じゃないね。



やがて膝下をびっしょり濡らした高嶺が、川辺に戻ってきた。

その手には、濡れた手提げ袋を持って。


「高嶺……っ」


駆け寄ると、高嶺が手提げ袋を差し出してきた。


「中、無事か?」


確認するよう促され、受け取り、中を見ると、ビニールで包装していたからクッキーに被害はなかった。


「うん。ありがとう、高嶺。
ほんとに、ありがとう……っ」


手提げ袋を抱きしめ、泣きそうになりながらお礼を言った、その時。


不意に、手が伸びてきたかと思うと、高嶺の冷たくて大きい手があたしの左頬にあてがわれていた。


自然と、視線と視線が、かち合う。


「……え?」


なん、で……。


「なぁ。一回しか言わないからよく聞けよ」


そして、親指であたしの頬をそっと撫でると。


「つかさ、俺はお前が好きだ」


高嶺は、形のいい唇を動かし、言葉を紡いだ。