「いい加減気づけよ。鈍感ばか女」
つぶやきながら、高嶺があまりにも優しい手つきであたしの顎をくいと持ち上げる。
視線の先に現れた高嶺の瞳が、あまりにも真剣で熱を帯びていて、縫い付けられたかのように目を逸らさなくなって。
まるで体の内側から叩いてるんじゃないかってくらいの鼓動の音が、脳髄にまで響く。
不意に高嶺が、動けなくなったあたしの耳に口を寄せた。
「俺は、お前のことが──」
と、その時だった。
「──つっちゃん……?」
空気を、そして高嶺の言葉を切り裂くように、突然聞こえてきた声。
聞き覚えのあるそれに、はっとしてそちらを見れば、充樹先輩が驚いたように目を見開いて化学室の入り口に立っていた。
「……っ」
「つっちゃん!」
「充樹先輩っ……」
一瞬、あたしを囲む腕が緩んだ隙をついて、高嶺の胸をぐっと強く押し返し、充樹先輩に駆け寄る。
これ以上、高嶺のそばにいられなかった。
どうにか、なってしまいそうで。
閉じ込めたはずの感情が、今にも飛び出しそうで。
呼吸がおかしい。心臓に肺が押し出されるように、うまく息できない。


