【完】素直じゃないね。



「行かせない、桜庭のとこなんて」


高嶺のこもった声が落ちてきて、耳に届く。


……なんで? どうして?

どうしてこんなこと言うの?


わからない。 わからないよ、高嶺。


「やっ、離して……っ」


「離したくない」


目を合わせないまま抵抗しても、高嶺の声が耳から入ってきて、脳に響く。

心臓を容赦なく揺さぶってくる。


もう、もう──。


「そんなにあたしをからかって楽しいっ?
なんとも思ってないくせに、そんなこと言わないで……!」


あたしが声を張り上げた次の瞬間、掴まれていたぐっと腕を引かれたかと思うと、高嶺の胸に引き寄せられて。

あたしの体は、あまりにも簡単に高嶺の腕の中に包まれていた。


「──なんとも思ってないやつに、こんなことするわけねぇだろ」


高嶺の腕の中で、あたしは思わず目を見開いた。


「え……?」