【完】素直じゃないね。



部活がまだ終わらない中途半端な時間だからか、まわりを歩く学生の姿はない。


なんとなく言葉が見つからずに高嶺の後をついて歩いていると、六時になると薄暗い、そんな季節になっていたことを実感する。


最近、季節の移り変わりを感じる余裕もなかったな……。


高嶺と出会う前は、こんなに毎日めまぐるしくなんてなかった。


ただひたすら乃亜にメロメロになって、癒されて、ハアハアして、その繰り返し。


そんな毎日が幸せで、このまま高校を卒業していくんだと思ってた。


それが高嶺と出会ってからは、100%乃亜専用だった思考回路に、高嶺が割って入ってきた。


こんなにも私の世界を変えちゃった高嶺の存在は、いろんな意味ですごく大きいんだと思う。


ふと、今朝の高嶺のことを思い出した。


そういえば、目が合ったあの時、高嶺なにか言おうとしてたっけ。

なに言おうとしてたんだろ。


そんなことに考えが及んだ、その時。

「つかさ」

不意に、高嶺があたしの名前を呼んだ。


「ん?」


顔を上げると、高嶺がこちらに背を向けたまま、声を発した。


「この前は悪かった」