【完】素直じゃないね。



「充樹先輩の気持ち、すごく嬉しかった……。
こんなあたしを好きって言ってくれて。
この言葉が正しいかわからないけど、本当にありがとう、充樹先輩」


これがあたしの気持ちだ。


きゅっと口角を上げて笑みを浮かべると、不意に腕を引かれ、再び抱きしめられた。


「ちょっ、先輩っ……」


慌てるあたしを他所に、あたしの肩に顔を埋めるようにして、充樹先輩が大きく息を吐く。


「あ〜、やっぱり好きだな〜」


「えっ?」


「まだ好きでいさせて。
高嶺くんのことなんて、俺がすぐ忘れさせてあげるから」


「充樹、先輩……」


「それでもいい?」


切実な声音が、あたしの胸に響いてくる。


ずるい。

そんなふうに言われたら、頷くしかできないじゃんか。


「……はい」


あたしはそっと、充樹先輩の背に手を回した。


いつの間にか手の震えは止まっていた。