【完】素直じゃないね。



「新しくできたショッピングモール、ずっと行ってみたかったの。
パンケーキもおいしかったー」


「美織、パンケーキ好きだもんね」


そう言うと、美織が口元に笑みを乗せたまま、じんわりと目を細めた。


「うん、すごく好き。
付き合い始めの頃、よく食べに行ったね」


「ん、ああ、そうだね」


不意打ちだったから、つい笑顔が遅れる。


……付き合い始め、か。


思わず目を伏せた、その時。

不意に隣で美織が声をあげた。


「あ、そうだ!
夜ご飯、うちで食べてくでしょ?」


まるで、ほつれた雰囲気を縫いとめるかのような、普段より明るい声。


はっとして隣を見れば、美織がこちらを見上げていた。


「ね?」


首を小さく傾げながら、そっと微笑む美織。


美織に引っ張られるように、俺もいつもの笑みを浮かべた。


「じゃあ、ご馳走になろうかな」

そう答えようとして、だけどそれは電話の着信によって遮られた。