【完】素直じゃないね。



「……っ」


地面に足が張り付いたように、動けなくなる。


それは、高嶺だった。


──高嶺と一緒に出て来たのは、美織さん。


先約とは、やっぱり美織さんだった。


「可愛い服いっぱいで、悩んじゃうなー」


「ショッピング来るの久々だもんね」


聞きたくなんてないのに、ふたりの声が耳に入ってきてしまう。


高嶺、あんなに優しい声で話すんだ……。

優しく、そっと触れるような声で。


寄り添って歩く美織さんの腕が、自然と高嶺の腕に回った。


付き合ってるのだから、腕を組むくらいなんの不思議もない。


だけど目の当たりにすると、目の前の事実から逃げられずに、胸が張り裂けそうになる。

そう、これがまごうことない現実。


やっと、足が呪縛から解かれたように動いた。


すかさず踵を返して、逃げるようにその場を立ち去る。