【完】素直じゃないね。



噂をすればなんとやらだ。


振り返れば、高嶺が怪訝そうな顔をして立っていた。


「お、ちょうどよかった!」


宙くんが明るく言い、あたしに目配せする。


頑張れ、そう背中を押され、あたしは小さく頷き返すと再び高嶺に向き合った。


「高嶺。今度の日曜、一緒に出掛けない?」


すると、思ってもみなかった提案だったのか、少し驚いたようにあたしを見つめた高嶺が、

「……あー」

と言いながら目を伏せた。


「その日は先約があるからパス」


「……っ」


……なんでわかっちゃうんだろ。


多分、それくらい高嶺のこと見てるから。


わかりたくないのに、高嶺の瞼の裏に映っているその人が、痛いほどにわかってしまう。

高嶺の言葉のひとつの端々に、敏感に感じとってしまう。

先約が、きっと美織さんであることを。


先約なのだから、美織さんを優先するのはしょうがない。

頭ではそう理解してるのに、美織さんが選ばれて、あたしが切り捨てられた。そう感じてしまうのは、あたしの心が卑屈になっているからなのだろうか。