「な、なによーっ!」
せっかく人が頑張ってテンション高いまま帰ろうとしてるのに、この状況で引きとめないでよ……!
髪を抑えながら半ばヤケクソで振り返ると、パイプ椅子に座った高嶺が、あたしの髪を掴んだまま、無表情を崩さず口を開いた。
「この髪、なんだよ」
「はぁっ?」
なんだよってどういうことよ!
今、髪に文句つける必要あるっ?
訳がわからず半泣きで怒りをぶつけそうになると、それより先に、高嶺がさっきのトーンで続けた。
「あいつに、これがいいって言われでもしたのかよ」
「え?」
あいつって……。
思わず目を見開いた次の瞬間、高嶺があたしの髪を掴んで引き寄せた。
途端、高嶺の甘い香りが鼻をくすぐるほどに、顔と顔との距離が縮まる。
そして至近距離からあたしを見上げたまま、憮然と言い放った。
「おまえはなにもしてない方がいいんだよ、ばーか」
「……っ」
もう、意味わかんない。
なに、なに、なに。
なんで、こんな心拍数上がってんの……。
「……高嶺の方がばかっ!」


