【完】素直じゃないね。



「つかさ」


不意に、あたしの名を呼ぶ高嶺の声によって、意識が引き戻された。


「う、うん?」


「これ終わったから、そっちの棚移してくんね?」


「えっ、はやっ!」


気づけば、高嶺の前には書類が高々と積み重ねられていた。


あたしがぼーっと手を止めている間に、この作業量。

残りはもう少し。


さすが、スピードが違うな……。


呆気にとられながらも腰を上げ、壁際の棚に書類を移動する。


「高嶺ってほんと手際いいよね。
料理とかも上手そう」


「や、料理はたまにしか作んねぇかも。
大体作ってもらうし」


「……っ」


あたしの手が、足が、思わず止まる。


きっと、高嶺にとっては何気ない言葉。


だけど、あたしの胸には深く突き刺さってしまって、受け流すことができなかった。


……それって、お母さんの?

それとも──。


「美織、さん……?」