【完】素直じゃないね。



「……ん?」


ふと、男の人がなにかを察知したような声をあげた。


「震えてる……。
君、もしかして男苦手なの?」


「……っ」


図星を突かれてしまった。

こんなにもあっさりと。


数秒押し黙っていたけれど、あたしは男の人に背を向けたまま、観念して頷いた。


そうすることでしか、この手を離してもらえる気がしなくて。


「そっか、ごめんごめん。
ちょっと構いたくなっちゃって」


面白がっていた時とは打って変わって、その声は穏やかな色を帯びていた。


……あれ? もしかして、ほんとは話がわかる人なの?


「じゃあさ、離れるからもう一回顔見せて?」


「え?」


「すっごい離れるから、顔見たい。
いい?」


「……すっごい距離を取ってくれるなら」


「よし来た」


嬉しそうにそう言うと、手が離れて、遠ざかっていく足音。


「ここら辺なら大丈夫かなー?
こっち向いてごらん?」


かなり遠くから聞こえてきた声に、あたしは躊躇いがちに振り返った。