【完】素直じゃないね。



「すみませんでした……!」


だからもう許してっ!

半ばやけくそのように謝って、図書室から走り去ろうとしたその手は、後ろから強い力で掴まれていた。


ドアの直前で虚しくも、体の動きが止まる。


「つーかまーえた」


耳元で聞こえる弾んだ男の声に、ゾゾッと鳥肌が立つ。


そんなことはつゆしらず、後ろから馴れ馴れしく話しかけてくる声。


「なんで逃げんの?
いいじゃん、名前くらい教えてくれても」


喉が締めつけられたように、声が出ない。


恐怖心に心が支配される。


だめ、と思うのに、掴まれた手がひとりでに震えてしまう。


不意に、頭の中にあいつが浮かんだ。

いつだってピンチの時は駆けつけてくれて、何事もなかったかのようにいとも簡単にあたしを救ってしまう、そんなあいつが。


……助けて、助けて、高嶺……。


心の中でそう願った時。