「……ん、ちょっ……ちょっとなにしてんのよーっ!」 パシンッ──。 乾いた音が音楽室に響いた。 怒りに任せて放った平手打ちは、高嶺の頬にクリーンヒット。 「最っ低!」 感情のまま、怒鳴り声を張り上げる。 高嶺の表情は、乱れた前髪に隠れて窺い知れない。 だけど、あたしが怒りに肩を震わせていると、ぼそっと小さく呟いた。 「……ちっ。めんどくせぇ」 ……はい? 今、舌打ちした、よね? それに、言葉遣いも声のトーンも、教室で聞いていたのとまるで違う……。