そうして泣く泣く乃亜と別れたあたしは、音楽室へ向かった。


それにしてもなんの用だろうかと、検討もつかないあたしは首をひねる。


クラスが同じとはいえ、まだ新学期初日。

あっちがあたしの存在を知ってたことに驚きなんだけど。


疑問符を浮かべながら、3階の一番端にある音楽室のドアを開ける。


開けた瞬間、音楽室特有の匂いがむわっと遅いかかってきた。


ガランとして、電気もついてない薄暗い音楽室。

ドアの正面──窓にもたれかかるようにして、高嶺が立っていた。


あたしの姿を認めるなり、「あ、日吉さん」と声をあげて、高嶺がこちらへ歩いてくる。


日の光を背に受けているせいか、高嶺の表情は細かくはわからない。


だけど、あちらから見たらあたしの姿は、はっきり視認できているのだろう。


「来てくれてありがとう。
わざわざ呼びだして、ごめんね?」