「玲央……さん……?」
勇気を振り絞って名前を呼ぶと、良い子だと褒めるように頭をグシャグシャと撫でられる。
「そうだ。これからはそうやって呼ぶんだ」
「はい……」
玲央さん。
名前で呼ぶと一層親密さが増したような気がする。
会社では間違っても呼ばないように気を付けなきゃなあ……。
「優里」
今度は自分の名前を呼ばれ、ふっと顔を上げる。
悩みの種がひとつ増えたことに気を取られていたが、いつの間にか抱擁から解放されている。
そして、当然のごとく一色社長が手を差し出している。
「何をぼさっとしている。帰るぞ」
待ちきれなかったのかこちらが差し出す前に、強引に手を繋がれる。
「あ、待ってください!!」
繋いだ手から一色社長の強い意志が伝わってきて、私はまた人知れず頬を赤く染めるのだ。
……もう離さない。
前世の因縁、それとも運命とでもいうべきか。
束縛と愛情が比例しているならば、私はもうとっくに逃げられないのだ。



