「覚えていなくても構わない」
私の不安を表すかのように、ひときわ強く風が吹く。
次の瞬間、目の前にあったのはエメラルドよりも更に強い光だった。
「またいちからやり直せば良いだけのことだ」
「あ……」
そう耳元で囁かれ、ふいに抱き寄せられると、コロンの香りと体温を直に感じた。
「その気がなくてもその気にさせるから覚悟しとけ」
一色社長からこんな甘い言葉を聞かされるとは思いもしなかった。
私は耳まで真っ赤になり、まいってしまった。
「い、一色社長……」
どうしていいのか分からず腕の中でもぞもぞと身動きしていると、一色社長が急に不機嫌になった。
「“玲央”だ」
それは……名前で呼べということか?



