「とにかく、お前にやるって言ってんだろう。受け取らないなら、今すぐそこの海に投げ捨てるぞ」
「それはダメ!!」
言うが早いか投球のモーションに入っていた一色社長の腕を抱えこむように引っ張って止めに入る。
高価なジュエリーを夜の海に投げ捨てたら二度と見つからないだろう。考えるだけでも恐ろしい。
「なら、つべこべ言わず素直に受け取れ」
「うう……」
ここまで性質の悪い脅迫方法なんて聞いたことがない。
(いいのかなあ……。こんな高そうなものもらっちゃって……)
一生かけても支払えない借金を背負わされた気分だ。
「つけてやる」
一色社長はいかにも楽しそうに小箱からネックレスを取り出すと私の背後に回った。
指示に従って髪を掻き上げると、チェーンがゆっくりと首を一周した。
うなじを無防備に晒しているのかと思うと、急に心拍数が上っていく。
(早くっ終わって!!)
目を瞑ってひたすら請い願う。
……この心臓の音が聞こえないうちに、どうかお願い。



