(ああ、もう!!違うっ!!そういう問題じゃないんだってば!!)
下着の色とかお腹の贅肉を気にしている場合ではない。
元夫婦といえども、超えてはいけない一線っていうのがあって……。
知り合って間もないのに軽々しくそういう関係になっちゃいけないと、私の良心がしきりに訴えていた。
(冷静に、落ち着いて……)
一色社長だってきっと話せばわかってくれる。
大丈夫、大丈夫と自分自身に言い聞かせる一方で、一抹の不安がよぎる。
でも、初めて会った時のように強引に迫られたらどうだろうか?
私は果たして断れるのだろうか。
“リリア”
……金色の瞳の奥にある情熱を私はとうに知っている。
「どうした?」
心配そうに声をかけられふっと我に返ると同時に、床にスプーンを落としてしまった。
毛並みの良い絨毯に沈んだスプーンをウェイターがさりげなく拾ってくれる。
「す、すみません……」
恐縮する私を気遣うように、別のウェイターが代わりのスプーンをすぐに持って来てくれた。
半分溶けかかった季節のアイスが、早く食べろと私を恨めし気に見上げている。
コーヒーを口に運びながら、一色社長は素知らぬ顔で言う。
「落ち着けよ。別にとって食ったりしないし、嫌がる女をどうこうする趣味もない」
「はい……」
私の浅はかな思考などとっくに見透かされていたのだ。
手を出さないと宣言されたらされたで、ちょっぴりがっかりしてしまうのが乙女心の複雑なところである。



