「んっ!!美味しいっ!!」
私は料理が乗ったお皿が到着するたびに、お行儀悪くはしゃいでしまった。
無職期間は貧乏生活が続いていたせいか、久方ぶりの美味しい料理に、ついつい乙女心が刺激されてしまう。
(うう……美味しいようっ!!)
特に、この舌の上で溶けてしまいそうに柔らかいお肉といったら絶品である。
手のひらを返すようで申し訳ないが、連れてきてもらって良かった。
自分のお給料ではとてもじゃないが手が出せない類のお店である。
「これも食べるか?」
一色社長はそう言うとまだほとんど手をつけていない己の皿を差し出した。
「食べないんですか?」
「お前が美味そうに食っているところを見ている方がよっぽど面白いからな」
一色社長は、先ほどから食事もそこそこにお酒ばかり飲んでいる。
(こんなに美味しいのにもったいないなあ……)
もちろん飲んでいるお酒だって高級品ではあるけれど……。
顔色一つ変えずにグラスの中身を飲み干しているが、それは間違っても単なるジュースではない。
(っていうかそんなに飲んでいいの!?)
アルコールを飲んだということは、もう車は運転できないということである。