「レオンハルトにとってクラウディアは愛すべき故郷であり、守るべき誇りでもあった。俺がクラウディアを立ち上げた理由のひとつに、故郷をもう一度取り戻したいという願望が含まれている」
「あ、インタビュー記事読みました。20歳で起業されたんですよね」
インタビュー記事には起業当時の一色社長と賀来副社長の写真も掲載されていたが、その頃からアパレル業界の風雲児の風格が出ていた。
「ああ、人を集めるには会社を立ち上げるのが手っ取り早いからな。クラウディア王国が宝飾品の加工や衣類の縫製に長けていたことをヒントにアパレル業界を選んだ」
語られる株式会社クラウディア誕生秘話に、へえっと感心してしまう。
「少し話が逸れたな」
「いいえ、面白いです。もっと話してください」
それからも、クラウディア王国や一色社長に関する話題は尽きることなかった。
気候、風習、政治制度など、元一国の主なだけあって一色社長はクラウディア王国のありとあらゆる物事に精通していた。
それを基礎知識のない私にも理解できるように分かりやすく説明してくれるため、聞いていて飽きることがなかった。
(話しやすい……かも……)
それは、元夫婦だから?
なにはともあれ目的地に到着する頃には、私の中にあった一色社長に対する苦手意識は幾分薄れていたのだった。