「……クラウディアってどんな国だったんですか?」

「急にクラウディアのことを知りたがるなんて、どうかしたのか?」

まあ、クラウディアの話題を振ろうなんて自分でも意外だと思う。

「私、前世のことは何一つ覚えていません。でも、あの会社では皆、クラウディア時代のことを楽しそうに話していて……」

クラウディア王国の元国民達は、口々に懐かしそうにクラウディア時代の思い出を語る。

彼らにとってクラウディアとは第二の故郷、魂の原風景なのだ。

「だから、クラウディアがかつてどんな国だったのか知りたいなって思って……。それに、ほら!!もしかしたら話を聞いている内に私も何か思い出すかもしれないし!!」

名案でしょう?と得意げになっていると、よほどおかしかったのかクスリと笑われた。

(うう……笑われてしまった……)

ただし、一色社長の横顔が嬉しそうだったのでよしとする。

「クラウディアか……。そうだな……とても美しい国だったな。森も大地も水も。どれひとつとして思い出せないものはない」

まるでフロントガラスのその先に、クラウディア王国の情景が広がっているかのようだ。

……なんて優しい目をするんだろう。

愛おし気に目を細めているのを見て、不覚にもときめいてしまう。