「あの……私はどの部署に配属される予定なんでしょうか?」
「榊さんの場合は少し特殊なので、まずは営業部で事務作業を担当してもらいます。折りを見て他の部署に異動してもうかもしれません。一色社長は“秘書課に籍を置け”と主張していましたけどね。まったく懲りてないようです」
一色社長の言動が夏八木さんを始めとする側近の方々を困らせたことはその表情から明らかだった。
……こちらも前言撤回だ。
一色社長ってば公私混同もいいとこである。
まともな社長という美点までなくなったら何も残らないんじゃないのか。
「ご安心ください。賀来副社長がいる限り、社内で悪さは出来ませんから」
よほど微妙な顔つきをしていたのか、夏八木さんがささやかな慰めをくれた。
(前途多難……かも……)
人知れずはあっと深いため息をついた。
すっかり意気消沈してしまったことを気の毒に思ったのか、夏八木さんは営業部のある12階のフロアに降り立つと私の顔色を窺ってきた。
「大丈夫……ですか?」
「はい、何とか……」
辛うじて笑顔で取り繕うことが出来たのは奇跡に近い。



