「10階から12階は営業部のフロア、13階は調達部とデザイン部、14階は総務部、経理部、あとは役員フロアになっています」
夏八木さんにひとつひとつの部門について詳しく教えてもらうと、最初に感じていた不安はほとんどなくなっていた。
(なーんだ。普通の会社じゃん)
これなら上手くやっていけるかもと、足取りも軽くなる。
しかし、そうは問屋が卸さないのが、株式会社クラウディアである。
「この会社では前世の職業や適正に応じて配属先が決まります」
「え!?」
「元商人は経理部、お針子や優れた職人はデザイン部、行商人や旅芸人は調達部として全国を飛び回っています」
(いやいや、ちょっと待った!!)
サラッと流そうとしているけれど、さっきと言っている話がまるで違うではないか。
前言撤回!!やっぱり普通じゃなかった!!
「わ、私はどうなるんですか!?」
まだ前世を思い出していない訳だし、そもそも元王妃に職業適性なんてものはあるのか。
「大丈夫ですよ。自分の前世を思い出していない社員に関しては、本人の希望と各部署の状況に応じて配属が振り分けられますから」
慌てふためく私とは対照的に夏八木さんは至って冷静に答える。



