天高く太陽が燦々と輝く、うららかな午後のことである。

とあるオフィスビル、“株式会社クラウディア”の応接室には厳かな雰囲気一切をぶち壊すような野太い声が響き渡っていた。

「はーなーしーてーください!!」

私は死にもの狂いで腕を前に突き出して、頭上の人物の顔を真正面から鷲掴みしていた。

普段はとろい私も、貞操の危機が掛かっているとあれば素早く動けるのだと我ながら感心してしまう。

黒と木目地を基調としたインテリアと煌びやかな絵画が来客をもてなすはずであった応接室は惨憺たる状況である。

部屋中を所狭しと逃げ回ったせいか観葉植物の鉢植えは倒れ、絵画は床に落っこち、革張りのソファには残念なことに靴跡までついている始末だ。

「てめえっ!!いい加減にしろよな!!」

顔を鷲掴みされた男性は今にも噛みついてきそうなほど怒り狂っている。

「正当防衛です!!そちらこそいい加減にしてくださいいい!!」

私は怒りで顔を真っ赤にしながら、負けじと言い返した。