「何か気になることでもありましたか?」
書類の角をトントンと揃えながら、夏八木さんが尋ねてくる。
正直に言っていいものかかなり迷ったが、夏八木さんがしきりに話すように促すので観念して白状した。
「クラウディア王国の元国民による会社ってどんなものだろうって思ってたんですけど……意外と普通だなあって……」
説明された就業規則はどこをどうみても普通そのもので、拍子抜けしてしまった。
とって食われやしないかとビクビクしていた自分が哀れに思えるほどである。
包み隠さず述べると、夏八木さんはクスクスと笑い出した。
「前世なんて信じている頭のおかしい連中が働いている会社だから、普通じゃないことがまかり通るとでも思っていましたか?」
私はぐうの音も言えず、押し黙った。
……図星である。