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「始業は朝9時から18時まで。水曜日はノー残業デーです。有給を申請する場合は3日前に上司に申請してください。年金と保険関係の書類はこちらでいったんお預かりしますね」

夏八木さんはその他細かい注意事項などを軽やかに列挙すると、最後に5月の風のように爽やかに微笑んだ。

「他に何かご質問は？」

「……いいえ、ありません」

長かった説明がひと段落して、ふうっと一息つく。

株式会社クラウディア、入社初日。

昨日はあまり眠れず、明け方まで布団の中で寝返りを打っていたせいか瞼がまだ重い。

だって仕方ないよね？

クラウディア王国の元国民達が働いている会社なんて想像もつかないし、まるっきり未知の領域なのである。

何が起こったとしても不思議ではないと一応の覚悟はするものの、不安が頭をよぎって睡眠を妨げてしまうのも無理はなかった。

（それが……まさか……ねえ……？）

昨夜眠れぬ夜を過ごした間抜けな自分に呆れながら、お茶をストローでゴクゴクと啜る。