恋に恋する乙女ならば、誰しも一度くらいは妄想したことがあると思う。

売れっ子小説家に拾われて、ひとつ屋根の下で生活とか。

異世界にトリップして、麗しの王子様と冒険の旅とか。

旅先の温泉旅館の若旦那と、しっぽり湯けむり修業とか。

己のスペックは棚上げして相手が美化されているのは、独身彼氏募集中の寂しい女ということで許して欲しい。

現実は小説程都合の良くいかないのだから、夢くらい見たっていいじゃないか。

あえて、他人に指摘してもらわなくても十分自覚している。

目立った特技もなく、容姿は百人並み。どこにでもいる平凡な24歳。

そんな私に小説のようなラブロマンスが訪れるはずがない。

……そう。

今、置かれているこのトンチンカンな状況こそ、夢だ!!妄想の産物なのだ!!

ああ、もう!!何がどうしてこうなった!!

少なくとも私はこんな展開など望んでいなかったのに……。

神様とは時に優しく時に残酷なものである。