“株式会社クラウディア”が“クラウディア王国”の元国民達による会社だなんて誰が想像できるだろうか。
これは、夢なのか?
それとも、お伽噺の続きなのか?
この会社の社員は全員がクラウディア王国の元国民?
一色社長だけならまだしも会社全部……!?
「ええっと……。それは賀来さんと夏八木さんも?」
「はい、私もクラウディアの元国民です。宰相の職についておりました、“ライハ”と申します」
「王妃様の侍女を務めておりました、“マリイ”です」
のんびり自己紹介を始めるふたりをよそに、そろそろ私の頭の方が許容量を越えてしまいそうになっている。
念のため一縷の望みをかけて尋ねてみる。
「あ……の……全部、冗談ってことはないですよね?」
集団催眠っていうんだっけ?こういうの?
パンっと掌を叩いたら、はい解けましたって具合になかったことにできないのか。
「私も夏八木もあなたと同じ正常な人間ですよ。少しばかり前世の記憶を持っていますがね」
賀来さんと夏八木さんは困ったように、そして少しばかり寂しそうに微笑む。
全部冗談だったら良かったのにという希望はあっけなく砕かれたのだった。