「ええええ――――――!?」

私は思わずそう叫ぶと、椅子から転げ落ちて背後の壁際まで後ずさった。

一色社長が元国王ということより、自分が元王妃という方がよっぽど信じられなかった。

「私……本当に……元王妃様なんですか?」

恐る恐る尋ねると賀来さんは一切の迷いもなく答えるのだった。

「はい。あなたは間違いなくリリア様の生まれ変わりです」

王妃らしいところなんて、ないに等しいのに?

他人に跪かれているこの状況も告げられた言葉の意味もまるで理解できなくて、もうお手上げである。

頭が痛いというよりは、頭がおかしくなりだ。

百歩譲って一色社長の前世が元国王だったとして、私まで巻き込まれるのはおかしいんじゃないか。

私には前世の記憶など欠片も残っていないし、王妃様の生まれ変わりなんてあり得ない。

あり得ないけれど……確かに一色社長は私のことをリリアと呼んでいた。

リリアと呼んで愛おしそうに頬に触れ、あまつさえキスをしようとした。

元王妃。金色の瞳を持つあの人の元奥さん。

……私の理解が及ばないところで、運命の歯車は回り始めているのだ。

ちっぽけな存在であるはずのこの身に注がれている賀来さんと夏八木さんの視線が、重くのしかかってくる。