「意外と冷静なんですね。もっと取り乱すと思っていましたよ」

賀来さんは感心したようにほほうとしきりに頷いた。

「十分驚いています……」

いまいち現実味に欠ける話である。普通の人間ならまともに取り合うことすらしないだろう。

今は一色社長に襲われかけた記憶の方が強烈過ぎて、他が霞んでいるだけに過ぎない。

「ようやく本題に入れますね」

「え!?」

コツコツと床を蹴る靴音が辺りに響いたかと思うと、賀来さんが私の前に跪いたではないか。

「リリア様」

そう、私は大事なことを見落としていた。

「あなたはかつてレオンハルト様とともにクラウディア王国の未来を担うべく隣国から嫁がれた王妃“リリア”様の生まれ変わりなのです」

……一色社長が元国王ならば、その妻は当然のことながら王妃であるということを。