「や、あの……。私も色々壊しちゃったと思いますので……」
逃げ回る過程でガシャンとか、バコッとか、身の毛のよだつ破壊音をいくつも奏でていて内心冷や冷やしている。
「もちろん弁償は必要ありません。何の説明もなしに、一色社長とあなたを会わせてしまったこちらに落ち度がありますから」
「そうですか…」
賀来さんの言葉に安心して、そっと胸を撫で下ろす。
それにしても偉い人の謝罪というのは、居心地が悪いものである。本当に謝ってほしいのはこちらの方々ではないというのに……ああ、思い出しただけで段々腹が立ってきた。
仕事をすると言ってどこかに行ってしまったが、本来謝罪すべきはあの変態男なのだ。
“リリア”
……黄金の瞳が呼んだ名前の切なさに決して同情してはいけない。
残像を振り払うように首を横に振り、賀来副社長に向かってずっと疑問に思っていたことを尋ねる。



