雑誌やテレビ見かける芸能人も顔負けの眉目秀麗な顔立ちは妄想の類でも滅多にお目にかかれない。しかも耳が蕩けそうな美声に、逞しい体躯の持ち主である。
こんな状況でなければ私だって……目の保養だと感謝して拝みたいくらいだ。
……ちょっと悔しい。
「何が気に入らない?」
心の声が聞こえていたのか、今度は優しくご機嫌を取るような甘い声でなだめすかす。
一色社長の指先が、頬を撫で、顎を辿り、首筋を経て、鎖骨を触れた。
まるで恋人同士の戯れのような艶めかしい動きに翻弄されそうになる。
……が、それも一瞬のことである。
私は元凶である手をパシンと払いのけると、毅然とした態度で挑んだ。
「気に入るもなにも……。あなたと私は今さっき出逢ったばかりの赤の他人です!!こんな風に襲われかけて嫌がらない女性がいると思うんですか!?」
力一杯感情をこめて訴えると、少しばかりの後悔が頭をよぎった。



