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(ああ、もう!!絶対あり得ない!!)
相棒のリクルートバッグを身代わりに初撃は辛うじて防いだものの、初対面の女性にいきなりキスをしようとするなんて変態か犯罪者に違いない。
私は変態か犯罪者の率いる会社に入社しようとしていたのか!?
それとも、これが入社試験とでもいうのか。
応接室に私達の他に人影はない。
助けを求めるには応接室から出て廊下を歩く人に縋るしかないが、社長を諌めることが出来る人がいるとはとても思えない。
壁際に追い詰められ身動きが取れず諦めにも似た感情が込み上げ、悔しさに目尻に涙が浮かぶ。
「どうして嫌がる?」
膠着状態にとうとう嫌気が差したのか、一色社長は不機嫌そうに眉根を寄せて尋ねてきた。
説得の甲斐あってか、話を聞く気になったようだ。
……いや、話を聞く気になったからと言って状況が良くなるわけではなさそうだ。
その口調から察するに嫌がられるはずがないと端から決めてかかっているのだ。
よほど自分に自信があるタイプなのだろうか。
確かに吐息が触れ合いそうなほどの距離で直視するには、そのご尊顔はいささか刺激が強すぎた。



