「そうだな。……幾斗。悪いんだけど…夏音ちゃん任せて良いか?俺もちょっと休むわ。」

「………。うん、おやすみ。」

「悪いな。…夏音ちゃん起きたら家まで送ってあげろよ?鍵は預けとくな。」

そう言うと鍵の付いたキーケースを俺の手に持たせ、事務所を出てホールに向かった。

マスターは何か考えたい時とか、休みたい時は大概一番奥のテーブル席の長いソファーで、寝そべるのが日課になっている。

…今回は過去を思い出したのかもしれない。
明日にはいつもの調子に戻ってるんだろうけど。
…誰にでも思い出したくない過去は有ると思う。

勿論、俺にだってあるし…。